平成6年度は、基本的に本年度研究実施計画に基づいて実験研究を行った。その概略を以下に記す。運動を習慣化している30歳代5名、40歳代6名、50歳代4名の協力を得て、基礎体温の測定(舌下温)を8月初めから毎朝行ってもらい、4週間ていどを周期とする規則的な低温相と高温相が現れた被験者については、各期のほぼ中間にあたる日を実験日とし、9月中旬から11月に環境温22℃、相対湿度50%の人工気象室内で以下の測定を行った。(1)体脂肪率(2)血液の採取(血中プロゲステロン、エストロゲン濃度)(3)末梢耐寒能を寒冷血管反応(CIVD)によって測定(4)安静時酸素摂取量(VO_2)を椅座位で、最大酸素摂取量(VO_<2max>)は自転車エルゴメータを用いた漸増負荷法で測定した。測定は、各被験者について性周期と卵胞期と黄体期に各1回、計2回行った。血中性ホルモン濃度測定値から、性周期の卵胞期と黄体期のホルモン環境とみなされた被験者について、測定値は性周期の各相で検討した。CIVDについてみると、F相にL相より大きなCIVD値を示した被験者は、30歳代で5名中4名、40歳代で6名中5名であった。一方、VO_<2max>がF相にL相より大きな値を示した被験者は、30歳代で5名中2名、40歳代で6名中2名であった。平均値でみると、30、40歳代のF相とL相のVO_<2max>とCIVDに有意差はなかった。また50歳代の閉経後の被験者についても、2週間の間隔をあけて同様に2回測定を行い、測定値を検討した。血中女性ホルモン濃度に大きな違いはないものの、VO_<2max>とCIVDの再現性は他世代に比べて必ずしもよくなかった。 昨年実験した20歳代の結果をあわせて、30、40歳代のF相とL相のVO_<2max>とCIVD_<index>のそれぞれの値の差異(ΔVO_<2max>とΔCIVD_<index>)ならびに50歳代の1回目と2回目に測定したΔVO_<2max>とΔCIVD_<index>について相関を検討すると、危険率5%で正相関が認められた。従って女性ホルモン分泌動態の直接的影響とはいえないが。他の何かの因子がVO_<2max>とCIVDに共通に影響している可能性が示唆される。
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