研究概要 |
成人女子の寒冷血管反応と持耐久的体力に対する性周期の影響を検討して、以下の事実が明らかになった。末梢耐寒能の指標である寒冷血管反応(CIVD)でみると、性周期の卵胞期(低温相、F相)に黄体期(高温相、L相)より大きなCIVD値を示した被害者は20歳代で10名中5名、30歳代で5名中4名、40歳代で5名中4名と、年代が高くなるとF相の方が高い傾向であった。一方、持久的体力の指標である最大酸素摂取量VO_2maxがF相にL相より大きな値を示した被験者は、20歳代で10名中4名、30歳代で5名中2名40歳代で5名中2名と、年代による変化は大きくなかった。各年代の平均値でみると、20、30、40歳代のF相とL相のCIVDとVO_2maxに有意差はなかった。50歳代の被害者4名で、CIVDとVO_2maxを2回測定した結果、血中女性ホルモン濃度は低いにも関わらず、CIVD値とVO_2maxの再現性は必ずしもよくなかった。体重あたりVO_2maxは加齢とともに減少する傾向であったが、CIVD値は20歳代でF相、L相ともに、それ以上の年代のCIVDに比べて顕著に小さい値であった。20、30、40歳代の個々人のF相とL相のCIVDinidexとVO_2maxの差(△CIVDinidexと△VO_2max)ならびに50歳代の1回目と2回目の△CIVDinidexと△VO_2maxの相関をみると有意水準がほぼ5%で正相関が認められた。従って女性ホルモン分泌動態の直接的影響とは考えにくいが、VO_2maxとCIVDに共通に影響している因子の存在する可能性が示唆される。またF相よりL相にCIVD,VO_2maxの高い20歳代の被験者で、60分間全身寒冷気曝露中の体温と体温調節反応をみると、L相の平均皮膚温は高く保たれ、熱産生量は大きく、指尖部皮膚温は低く保たれる傾向が示された。L相では末梢皮膚温を低く保ち、核心温度を高く保つ体温調節反応が働くものと考えられる。
|