研究課題/領域番号 |
05680069
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
太田 茂秋 茨城大学, 教養部, 教授 (50042817)
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研究分担者 |
夫 基源 茨城大学, 教養部, 助教授 (00260464)
松坂 晃 茨城大学, 教養部, 助教授 (70190436)
富樫 泰一 茨城大学, 教養部, 助教授 (70207538)
日下 裕弘 茨城大学, 教養部, 教授 (80177980)
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キーワード | 高齢者 / 野外・自然志向 / ライフ・スタイル / フロー / ライフ・コース |
研究概要 |
本研究は、ミハイ・チクセントミハイの「フロー」(flow)の概念を野外活動に適用にすることによって、野外活動の「フロー」の内容を明らかにし、高齢者のレジャー・スタイルに関する意識調査を行うことによって、わが国における高齢者の野外・自然志向のライフ・スタイルの実像を明らかにすることを目的とした。 そのためには、本研究の中心概念である「野外活動のフロー(醍醐味)」を、初めての経験から熟練の経験を経た高齢者に至るまで、段階的にとらえ、分析する必要があることが明らかになった。かくして、平成5年度はそのための予備的調査と諸概念の明確化を主な作業とした。 〈平成6年度の研究実績〉 平成6年度は、平成5年度の研究成果と現在までの高齢者の野外・自然志向のレジャー・スタイルに関する国内および国際的な調査結果を考慮しつつ、茨城県波崎町に住む一般成人3000名(うち60才以上の高齢層の人々は、男女あわせて600名)を対象とした「レジャー・スタイルに関する意識調査」を実施すると共に、生涯学習関連の野外活動講習会に出席された高齢者の方々へのインタビュー調査などを行い、高齢者の野外・自然志向の身体活動に関する「意識内容」と「行動実態」を把握し、考察した。 その結果、いわゆる西欧的な基準で見た時の日本人のレジャー参加率は低く、先進国に比較して一般に貧困であり、こうした傾向は、野外活動の分野にも直接反映し、特に、「山野」「水・海」「空」のアウトドア・アクティビティにおいては、極めて低いことが明らかになった。 また、本調査における高齢者(60才以上の男女)の「自然志向の身体活動」の実態を見ても、男女とも、20年前と相変わらず、「園芸・庭いじり」、「国内観光旅行(避暑・避寒・温泉など)」、「ピクニック・ハイキング・野外散歩」がその3大余暇活動であり、男子の場合にはそれに「釣り」や「ゴルフ」が続くが、男女とも、他に見るべきものがない。野外活動を生涯のものとして日常的に行っている高齢者のライフ・コースは、極めて例外的なキャリアの集積であり、平均的な日本の高齢者のライフ・コースとは余りにもかけ離れている。それは、四季や地理的な変化に富んでいるわが国において、かつて豊富であった自然志向の価値意識を失いつつあるライフス・タイルの台頭と、現在の高齢者のライフ・コースにおける西欧的な野外活動教育の立ち後れによるものと考える。かくして、自然志向のレジャー・スタイルに関する限り、わが国の高齢者は、レイチャードとリブソンの「円熟型」や「安楽いす型」のライフ・スタイルとはほど遠い、と結論づけることができよう。
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