研究概要 |
骨の運動の効果を検討し,次の結果を得た. 1.トレーニングによる骨への影響について 青年期の大学男子学生(アメリカンフットボール選手)による約4ヵ月のウェイトトレーニングを行い骨塩量・骨密度の変化を調査した.また,約7ヵ月のトレーニングを行い,骨塩量・骨密度と筋力の変化を調査した.さらに,トレーニングの中断による骨塩量・骨密度と筋力の変化を調査した,その結果,短期間のトレーニングによって部位的な骨密度は増加したものの,全身骨塩量の変化までは至らなかった.さらに部位別にみると,上半身の橈骨遠位部,第3腰椎の骨密度が早期に変化し,その後下半身の脛骨近位部の骨密度が増加した.そして,骨密度の増加と筋力の増加は同時期におこる可能性が示唆された.また,トレーニングの中断により筋力の変化が起こる前に上半身の骨密度は減少した. 2.単発性走運動による骨への影響について 8週齢のトレーニングラット(T群)と安静ラット(NT群)に対し,単発性の走運動負荷をかけ,その直前,直後,3日後に骨代謝マーカーの測定(実験1)を,さらに12週齢時に実験1と同様の負荷の3日後および6日後に剖検し骨形態計測(実験2)を行った.その結果,血清ALP,尿中PYRおよびDPYRの測定結果をみると,T群においては負荷直後にPYRおよびDPYRの値が有意に増加しており,単発性の走運動により一見骨吸収のみが亢進したようにも考えられる.しかし,骨形態計測の結果,週齢は異なるものの,単位骨量ではT3群,T6群がNT3群,NT6群よりもそれぞれ有意ではないが高値を示す傾向がみられ,さらに分画形成面も,有意ではないがT6群がT3群,NT6群と比較して大きい傾向にあることから,T群においても走運動負荷により骨吸収のみでなく,骨代謝全体が促進されたことが推測された.
|