研究概要 |
この年度では,フェミニニティ・コントロール規定の現状から問題点の抽出を行い,次年度への研究のための暫定的な提言を行った。まず,現行規定の目的と方法について概観し,性染色体異常の選手を女子競技部門から排除することの適否を最も重要な問題点として抽出した。 この問題点を次の4つの観点から考察を加えた。「スポーツにおける性判定基準」の観点では,性判定が絶対的に存在するのではなく、相対的に決定されることを示し、スポーツ界独自の規定の可能性を示唆した。「名誉毀損とプライバシー侵害の危険性」の観点では,検査結果の事実誤認や本人への告知に伴う問題点を指摘した。「インフォームド・コンセントの有無」の観点では,医療関係で取りだたされているインフォームド・コンセント(説明に基づく同意)を参考に,選手自身に検査の目的や方法,最悪の事態についての十分な説明と同意があるか否かについて検討した。「等しい尊敬と配慮を受ける権利」の観点では,男女を等しく尊敬し,配慮するという観点から,女性だけに検査を義務付けることの不平等性を指摘した。 以上の検討から,現行規定には未決の問題点があるために再検討の必要性があること。さらに,スポーツにおける性判定は,倫理的に傾倒した考え方に変更すべきである点を指摘,その根拠として,性染色体異常は,選手自身の自己決定ではないこと,さらに人間的な原理,つまり「寛大さ」を優先することが,スポーツ活動には相応しい点を挙げた。
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