研究概要 |
昨年度は,日本の養護教諭とアメリカのスクールナースの制度、位置づけと役割についての比較検討を行ってきたが、今年度はその分析結果をふまえながら、両者の仕事と仕事に対する意識の比較検討を行った。 まず、彼らの仕事の質を規定する生徒たちの健康問題とそれに対する意識では、両国の子どもたちのおかれた社会的状況の違いを反映した問題が、それぞれに意識(重視)されていることが明らかになった。また、仕事の全体的枠組みには両国の共通した部分が多いが、その重点の置き方やより多くの時間をさく仕事ではいくつかの違いが認められ、その違いは主として彼らの学校における位置づけや役割の違いおよび看護職と教育職という身分上の違いによって生み出されていることが推測された。 彼らの仕事に対する満足感や将来指向については両国の対象的な結果を得た。将来、重点を置きたい仕事としては、日本は看護的機能に、米は教育的機能により多くの者が指向性を持っていること、将来展望については、米のほうがはるかに肯定的・確信的な展望をもつ者が多く、日本はややペシミスティックな傾向をもつ者が多いという結果を得た。また、仕事への満足度も、米のほうが満足の意を表わす者が圧倒的に多かったことも興味深い。こうした違いが生じる背景の分析は今後の追研究の課題としたい。 昨年度の制度、位置づけの違いと今回の仕事やその意識の違いを重ね合わせると、これらの違いが両者の実践の構図の違いを生み出していることがわかったことが、今後の研究の一つの昊点を照し出しているように思われる。
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