発汗中枢機構の活動性を反映していると解されている拍出頻度およびそれと発汗量や平均体温との関係について、AthletesとNon‐Athletesとの比較および短期運動トレーニング前後の比較を行なうことによって運動トレーニングの影響を検討し、発汗活動に影響する中枢性および末梢性機序の解析を目的とした。 被験者は、Athletesとして運動部に所属する男子学生6名(VO2max=53.4ml/kg/min)とNon-Athletesとして定期的な運動を実施していない男子学生5名(VO2max=35.9mi/kg/min)で、23℃、60%rhの環境にて80w、30分の自転車運動を実施した。 鼓膜温の変化は両群間に有意な差はなく、皮膚温は、Athletesの初期降下が小さく運動中の上昇度は高かった。局所発汗量はAthletesで少なく、発汗中枢の反応性を示す拍出頻度の平均体温に対する関係は、Athletesにおいて発汗中枢の感受性の低下を示した。また、発汗中枢の活動に対する末梢の反応性を表わす局所発汗量と拍出頻度との関係は、Athletesにおいて反応性が抑制されていることを示した。 短期運動トレーニングでは、局所発汗量は増大し、拍出頻度に対する発汗量も増大した。平均体温に対する拍出頻度の関係は左方へのシフト傾向が観察された。この結果は中枢性、末梢性機序に適応的変化が生じ、いずれも反応が亢進されたことを示している。 長期運動鍛練者は少量の発汗にて深部体温を維持でき、これには、中枢性および末梢性の感受性低下(慣れの現象)が寄与していることが示唆され、熱帯地住民に見られる長期暑熱順化と類似していた。一方、短期の運動トレーニングでは、いずれも反応性が高められ、長期トレーニングとは異なる適応的変化が観察され、大変興味深い。
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