筋活動によって、筋たんぱく質の分解が亢進するか否かは明らかでない。しかし不適切な栄養摂取に加え、激しいトレーニングによる糖質、脂肪等エネルギー源の枯渇は体たんぱく質の動員を招くことが予測される。筋たんぱく質分解後、遊離した構成アミノ酸の3-メチルヒスチジン(3-MH)は、分解も再利用されることもなく尿中に排泄され、また尿中に排出されるクレアチニン量は筋活動の如何を問わず筋量に比例して一定である。従って、3-MH/クレアチニン比は筋たんぱく質代謝回転率を表わす有力な指標となる。 本研究の目的は、筋グリコーゲンの備蓄度が、筋活動による体たんぱく質の分解にどのように影響するかを明らかにし、競技力の向上に寄与することである。実験は飼育用飼料を摂取させた対照群と高炭水化物飼料を摂取させた両ラット群を、本研究のため考案した強制遊泳装置により30分、30分×2回及び遊泳限界に至るまでの負荷を与えた後採尿し、その後下腿三頭筋及び肝を摘出し、冷水抽出法により筋グリコーゲン量を測定した。 3-MH及びクレアチニンは、TSKgelODS-80TMを担体とするHPLCて分離・定量した。筋グリコーゲン量は、筋量が少ないこともあって運動負荷後は殆ど測定できず現在酵素法による測定を検討している。 高炭水化物摂取群に比べ、対照群の遊泳限界後のたんぱく質代謝回転率が高いことから、エネルギー源の枯渇に伴い筋たんぱく質の分解が亢進し、エネルギー源として動員されたことを示したが、確認のために尿素排泄量測定の必要があった。また遊泳限界後も、肝グリコーゲンが完全に枯渇していないことから、エネルギー源の多少のみでなく乳酸蓄積等による疲労も考えられ、血中乳酸値の測定も必要であると思われた。更に、競技者の生活実体調査結果から、先ず健全なライフスタイルの確立が急務であると思われた。
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