本研究「動きの教育」では「動き」を「運動力学kinetics」と「運動学kinematics」の2つの視点から捉えた。前者の例として「はだし歩行の指導」、後者では「テニスストロークの指導」を題材とした。 I.kinetics・・・・教育的見地より注目されつつある「はだし教育」に着目し、履物を履いた場合(スポーツシューズ、皮靴:以下「履物」と略記)と裸足の場合(以下「裸足」と略記)における歩行・走行に力学的相違があるかを検討した。二枚の小型圧力板上に電動式トレッドミルを載せ、歩行・走行の床反力を測定した。測定時間の5秒間におけるPEAK-to-PEAK値(山谷差)の平均値を算出した。歩行速度は時速3kmから8kmまで6段階、走行では時速3kmから11kmまで9段階に設定した。1.歩行・走行ともに歩幅及び歩数は先行研究が支持するとおり、トレッドミル速度の増加に伴い増加した。2.「裸足」と「履物」の歩幅を比較した場合、「裸足」が「履物」より概ね10cm短かった。つまり歩数頻度(ピッチ)が多くなった。3.歩行の床反力は、時速3kmにおける140kg重から時速8kmにおける240kg重まで増加した。走行の床反力は、時速3kmにおける230kg重から時速11kmにおける310kg重まで増加した。4.歩行・走行時の床反力の上記P-P値は、トレッドミル速度の増加に伴い増加した。ただし、この床反力について、「履物」と「裸足」とでは意味のある差は生じなかった。5.2種の「履物」:シューズと皮靴に関しては、速度に対する歩幅・歩数の変化、床反力の上昇のいずれに関しても両者に大差がなかった。 II.kinematics・・・・ビデオ撮影機器を用い、テニス指導において初級者に対し、指導現場にて直ちに欠点ならびにフォームチェックを視覚的に確認させることにより技術向上の一助となるか否かについての研究も行った。体幹(近位)の動きについての上達は困難であるが、四肢(遠位)の改善は比較的容易であるとの示唆を得た。
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