運動時には筋活動による熱産生が増加し、これに伴って非蒸散性、蒸散性の熱放散量が増加する。ヒトではその内の蒸散性量の増加の方が体熱放散の手段としては有効で、それについて多くの研究がある。この運動時の蒸散性熱放散反応の大きさは、運動強度、姿勢、性周期、日内周期など種々の環境あるいは生体条件によって影響を受ける。しかし、食物の摂取によってそれがどのように影響されるかについては、研究代表者らの報告以外にはほとんどない。この研究は摂取による熱産生、体温の上昇が運動による蒸散性熱放散量に対してどのように影響するか、例えばそれが単なる相加的な影響しか与えないものか、運動による熱放散量の増加を変容させるか否か、その場合の機序は如何なるものか、等について運動生理学、栄養学、体温調節生理学の立場から分析した。 1.被験者と実験条件 健康な成人男子7名(非トレーニング群)を被験者とし、気温25℃、相対湿度40%の人工気象室内で、前夜からの絶食状態で60分間の安静を保たせた後、対照群はそのままで、摂取群は体重1kg当り50.2KJの固形食(糖質41.9%、蛋白質8.2%、脂質49.9%)を10分間で摂らせ、50分間経過してから自転車エルゴメーターで35%Vo__2maxの運動を40分間行なわせた。 測定項目 深部体温(食道温、鼓膜温)、平均皮膚温、平均体温を測定した。 心拍数、酸素摂取量、温度感覚、体重減少量を測定した。
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