研究概要 |
・わが国の大都市における産業構造の動向を把握するという当初の目的については,今年度は一定限度達成することができた。これに加えて,欧米諸都市のうち,カナダにおける事業所の立地展開,イギリスおよびフランスにおける事務所機能の立地展開に関する文献学的研究についても,かなりの程度の成果を挙げることができた。とくにイギリスの1980年になってからの立地動向については,これまでとは異なる事実を明らかにすることができた。フランスにおける事例についても,脱工業化にともなう事業所立地の地域的相違点を明らかにすることができた。 ・事務所機能の活動と密接な関係にある電話通話による地域間交流の実態を東海地方を中心に明らかにすることができた。結果は予想されたように,静岡県は関東,三重県の中勢以南は関西とそれぞれ密接なつながりをもっており,名古屋を中心とするこの地域は東西勢力の狭間にあることがあらためて確認された。 ・産業構造の高度化にともなって事業所立地が変化したことは,国や地域をあまり問わず一般的みとめられる。しかし,その具体的なプロセスは都市や地域によって違っていると予測される。統計資料の分析では事業所数の変化や立地パターンの変化は明らかになるが,その根底にある要因やメカニズムは十分には把握されない。来年度以降は個別のケーススタディを実施するか,あるいは第一次的資料を活用してその要因分析を行う必要がある。
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