・本研究は、産業構造の高度化にともなって先進諸国の大都市が地域的にどのように変容したかを明らかにする点にある。このうち、わが国の大都市における産業構造の動向と地域変化については、一定限度その目的を達成することができた。これに加えて、欧米諸都市のうち、イギリス、フランス、旧西ドイツ、イタリアにおける産業構造の変化と事業所の立地展開に関する研究についても、かなりの成果を挙げることができた。とくにイギリスの1980年になってからの立地動向については、これまでとは異なる事実を明らかにすることができた。フランスにおける事例についても、脱工業化にともなう事業所立地の地域的相違点を明らかにすることができた。 ・欧米における都市地域の発展、とりわけ事務所機能の立地過程を明らかにした。取り上げたのはイギリス、アメリカ合衆国、カナダであり、近年、大都市からこの種の機能が郊外や周辺に移動していることが明らかになった。これらの研究成果の一部は自著の中に取り入れられた。 ・先進諸国の大都市を中心に、脱工業化がどのように進展しているかを明らかにした。それによると、古い工業地域ほど脱工業化の進展度合いが大きいことが明確になった。しかしその一方で、サービス経済化によって脱工業化を補完することに成功した大都市も少なくない。サービス経済化により、大都市の地域景観は大きく変容することになった。 ・名古屋市における都市発展の過程において、区画整理事業をはじめとする半ば公的な都市基盤整備が重要な役割を果たしていることを明らかにした。こうした事実は現在の脱工業化に直接つながるものではないが、いつの時代においても、都市基盤整備が産業構造のあり方をかなり規定することは間違いないと考えられる。
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