研究課題/領域番号 |
05680128
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人文地理学
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研究機関 | 愛知学院大学 (1994) 兵庫教育大学 (1993) |
研究代表者 |
白井 義彦 愛知学院大学, 教養部, 教授 (80003755)
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研究分担者 |
吉本 剛典 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (30167019)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 水利権調整 / 河況係数 / 費用負担 / 施設管理 / 水没補償 / 生活再建措置 / 水利慣行 / 地域環境 |
研究概要 |
本研究は銅山川と吉野川の分水計画の実現条件と地域対応を分析し、比較考察を行ったものである。分水事業の必要条件は、宇摩平野と奈良盆地に共通する農業用水の不足であった。いずれの地域も、分水計画は江戸時代からあったが、下流側の分水反対のために挫折を余議なくされた。分水事業は河川の上下流に新たな支配従属の関係を設定するからである。このように、第二次大戦後まで実現が困難であった分水事業を可能にさせた契機は、大規模なダム建設である。銅山川分水は柳瀬ダムを造成し愛媛県と下流部徳島県との水利権調整を行なったこと、次にダム建設費についても、国・県・発電・農業(発電余水を便益する製紙業の身替り負担)分担の決定によって実現したものである。これに対し、吉野川分水は、紀の川筋和歌山県内の全農業用水に対する補給用水を用意することが計画実現のための必要条件であった。紀の川は河況係数の蓄大で示されるように、灌滸用水の取水が不安定な河相を有していたからである。そのため分水計画は、十津川・紀の川総合開発事業として取り上げられたが、本研究ではダム開発・費用負担・施設管理の三つにつき実現条件を明らかにした。以上の分水事業の二事例の地域分析から上流での分水二流域変更が認められるためには、下流部対策を重視する必要があることを指摘することができた。なお、ダム開発に伴う水没補償については、柳瀬ダムの生活立直し補償と津風呂ダムの集団移住による生活再建措置を高く評価した。分水事業の結果、二事例ともに、受益地域の干害が回避され水利慣行が是正されて、分水事業の目的が達成された。ただ、銅山川分水後には、発電余水を利用した伊予三島・川之江市域の紙・パルプ工業の生産拡大に伴い大気汚染・水質汚濁など地域環境の悪化をもたらした。この点は、今後の分水政策の決定過程において、最も重要なチェック事項であることを示唆するものである。
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