1980年代半ば頃から、市町村水道の水道用水供給事業(広域水道)への依存が強まり、これと引換えに、各市町村在来の自己水源への依存度が低下し、それに伴って後者への環境監視が弱まって、地域の水環境が悪化するのでないかというのが、本研究のもともとの問題意識である。加えて昨年度(1994年度)はまれにみる渇水年となり、その地域的態様と広域水道との関係についても若干の検討を行なった。 本年度は、研究の締め括りの意味もあって、全国の、多少とも水道用水供給事業に依存するすべての水道事業体(約700)を対象とするアンケート調査を実施した。400余の水道事業体から回答が寄せられた。その詳しい分析結果は報告書で述べるが、広域水道の用水を導入した契機・理由として、県庁等の推奨による、とした回答が多くみられたことが特徴的である。これは、少なからぬ市町村が広域水道に加入後、自己水源からの取水量を減らしていることの有力な説明となるであろう。次に注目されるのは、広域水道に加入後も利用している自己水源に関しては、これというほどの水質の変化がみられない、という回答が多かったことである。これは、取水量を減らした水源に関しても同様であった。このことは、取水量を減らしても、水道事業体としては、僅かにせよその水源を利用しているかぎり、水質検査等の管理を行なうことを義務付けられていることによるものであろう。完全に取水を停止した水源については、その後の水質の変化は不明、とする回答が多く、アンケートの結果だけによって、上記の仮説を立証することは困難である。しかし、廃止後の水源地点の河川環境が悪化する傾向のあることは、現地調査(本年度は愛媛県吉田町など)によってもほぼ明らかである。
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