水道広域化政策に促されて、(1)市町村水道の水道用水供給事業=広域水道への依存が強まるのと引き換えに各市町村在来の自己水源への依存度が低下しているのではないか、(2)それに伴い後者への環境監視が弱まって地域の水環境が悪化するのではないか、というのが本研究の問題意識である。 上記(1)に関しては『水道統計』の分析によって、とくに1984年以降、水道用水供給事業の施設能力が急速かつ継続的に増大し、以後1991年度までに150の自治体が新たに広域水道に加入しているが、このなかの少なからぬものが従来の自己水源を全廃したり、著しく縮小していることが分かった。 そのなかで、深井戸を除く自己水源からの取水量減少の目立つ市町村やその同一流域内の自治体(山形県天童市・村山市・寒河江市・大江町、茨城県東村、新潟県柿崎町、滋賀県水口町、滋賀県吉川町、島根県大田市・邑智町、愛媛県吉田町、佐賀県佐賀東部水道企業団の給水地域)を訪問して、上記(2)に関わる調査(水道当局や廃止水源の現地での住民からの聞き取り)を行った。その結果、概して言えば、広域水道からの用水導入は当核市町村の内発的要求によるよりも県当局の慫慂によるところが少ないこと、自己水源からの取水を減らしてもその停止に至らない限りは水質検査等の管理を行わねばならず、その点で環境悪化にブレーキがかかること、取水を停止した水源については管理を行わなくなっているので当局としては水質等の変化を把握していないが、付近の住民の間では「悪化」と認識されている場合がかなり多いこと、などが分かった。この経験に基づいて広域水道の用水を導入した682自治体を対象とするアンケート調査を行い、417自治体から回答を得て、上記の諸点を一般的なものとみなしうることを確認した。
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