当初は、比較的規則的な街区割をもつ東京下町の墨田区本所と多摩ニュータウン内の多摩センターを対象地域に予定していたが、ランドマーク訪問実験直後の被験者に対するアンケート実施場所(東京都立大学)との関係で、本所を世田谷区成城に変更した。 多摩センターでは1993年11月に毎日曜3回、成城では同12月に毎日曜3回、それぞれ地図をもって移動する被験者14人と、地図をもたないで移動する被験者14人を使い、1時間で指定した七つのランドマークを訪問させた。毎回、訪問実験終了後に、ランドマークの位置と道順を示す手描地図の作成と、ランドマーク間の距離評価を、1時間強の時間を使って行なわせた。また、最後の調査の際には、対象地域の景観写真をみせ、地点確認の作業も行なった。 信頼するデータが比較的多くえられた多摩センターの分については、多次元尺度構成法(MDS)による分析を終えた。詳しい考察は今後行なうが、被験者の地図携帯の有無と、手描地図と評価距離というデータの違いにより、復元された4種類の認知地図には違いのあることがわかった。特に、地図を携帯しない被験者の評価距離データから復元された認知地図は主要街路の影響を強く受けており、認知地点と現実の地点との間の位置の違いは、認知心理学の概念である回転ヒューリステイックによって説明しうると思われる。
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