林業不況下で日本林業は低迷をつづけ、組織化された森林組合もその存立基盤を弱体化させてきた。その中で造林会社などの企業組織による林業生産が各地域でみられる。これら企業は、これまでの森林組合主導下で自由な活動が制約され、崩壊の危機に直面しつつ、そのような局面を乗り越え、今日に至ったケースが多い。それだけに、企業努力と存立のためのノウハウを有しており、今日の日本林業が低迷する中で林業生産を維持する力をもっており、今後の日本林業を支える可能性もある。本研究は、そのような造林・林業会社の類型とその存立条件、およびそれが及ぼす地域林業への影響とその役割を検討した。 その結果、まずこれらの企業が分布する地域は、新興の育林地域の中で、人口減少がいちじるしく、森林組合活動も不活発化した地域に重なり、東北地方や中国・四国・九州など西南日本にみられる。この場合、森林組合の弱体化の中で、それを補う役割として存立が可能になっている。また、東北地方では国有林の省力化の中で、国有林を支える代替部門として存立するタイプもみられる。また、個別の林業家の中で企業化への工夫を試みているタイプもみられる。 これらのいくつかのタイプの中で、自律的な企業経営をめざすタイプはまだ主流ではないが、いくつかの先行的事例も認められる。その代表例は島根県に本拠地をもつ林業企業がある。当初は、人口減少の中で林業労働力を欠く中で林業労働力を供給する形で始まり、地域へ定着化し同様な地域的条件をもつ中国山地一帯に拡大した。その過程で各地域に企業の支所が置かれ、労働力の地域的な需給が成立するようになり、雇用効果もあらわれつつある。また企業独自の山林取得をベースに、企業自体の林業経営も可能になっている。企業者の個性もみられるが、今後の日本林業における新たな担い手としての十分な可能性がある。
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