人は誰でも、幼い頃、指を使って、物の数を数えたり、足し算や引き算をする。多くの子供たちは、小学校1年の終了とともに指を使わなくなる。(“指離れ"をするという) ところが、ろう学校の子供たちは2年生になっても、3年生になってもこの指離れができない。2桁以上の足算の筆算や掛け算・割り算の筆算も指を使わなければできないのである。そのために普通学校との学習進度の差が学年の進行とともに大きくなっていく。それゆえに、『如何にして“指離れ"させるか』という問いに対する具体的な解答を与えることなしにろう学校の算数教育改善を考えることはできないのである。 本研究は平成4〜5年度において、この“指離れ"をさせるための具体的な方法を提唱した。平成6年度には、その成果を踏まえて、次のような(a)〜(d)の成果を得ることができた。 (a)“指離れ"させるための教材とそれを使った学習・指導法の普及・・・指離れできないで困っている子供たちは、ろう学校だけでなく、県下の普通学校のクラスにもたいてい数名いる。そのような子供たちのために、いくつかの学校を訪問し、その学校の教師全員を対象に説明し、県下の小学校への普及につとめることができた。 (b)“指離れ"させる原理と同じ原理に基づく、いわゆる“新しい学力観"に対応する指導・評価方法を提唱した。(教育工学関連連合学会で発表) 上記の成果を踏まえて、ろう学校における算数・数学の全員参加の授業を設計・実践した。
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