本研究は、次の(1)〜(4)の順序で、ろう学校と普通学校の両方で有効な算数・数学科教材と指導方法の開発を行った。 (1)(情報処理モデルの作成)算数・数学における学習活動(数学的思考活動)を支える次のような「3人の自分」に注目した情報処理モデルの作成(★五感によって誰もがその存在を確認できるような対称と対話をする自分 ★暗算をするとき思い浮かべる「そろばん」のように、その人にしかわからないものと対話をする自分 ★上の二人の自分から提供される情報を結合して新しい情報を得る自分 (2)(表現フレームの作成)上記の情報処理モデルに基づいて、子供たちの数学的思考活動を構成する知的活動を表現するための表現フレームを作成(3)(課題について考えている子供自身の「表現フレームによる表現」)ろう学校ならびに普通学校の子供たち一人一人の思考活動の実体を(2)で得られた思考活動の表現フレームを使って表現する。(4)「フレームによって表現された子供」が課題解決のために必要な教材と指導方法を開発する。 その過程において、我々は、次のような学習指導上極めて重要な知見を得ることができた。 『ろう学校の子供たち全員と、普通学校での"遅れがちな子"の学習が遅れる原因は、上記の3人の自分の活動の結合が適格に行われていない所にある。上記の3人の自分は、課題可決に向けて、適格に活動させてしまうような教材・指導法は、ろう学校の子供たちはもちろん普通学校の授業についていくことができないで子供たちの学習活動をも、確実に進展させていくことができる。』
|