研究概要 |
初年度は,まず,構成主義に基づいた化学概念形成に係わるミスコンセプション研究の文献収集,および,子どもの理解研究に寄与できる研究方法論に関する文献の翻訳(出版予定)を行った。 また,実態調査では,重要な科学概念である「粒子概念」と「化学反応の概念」について,子どもたちのミスコンセプションを調査した。たとえば,ミスコンセプションを生み出す粒子概念に関する混乱点としては, 粒子そのものの性質に関する混乱, 巨視的性質に付与するこんらん, 粒子は運動していないとする混乱, 粒子と粒子の結合に関する混乱, 粒子間の空間に関する混乱,などが確認できた。「化学反応の概念」に関しては,子ども達 の日常経験的な思考を, 置換, 変形, 変成, 変性に分類することができた。また,化学を復修した生徒でさえ,化学反応の問題解決場面においては,具体的な巨視的世界の概念を微視的な原子の世界に単に移し換えて理解していることが明らかになった。 本研究の基礎となる構成主義では, 子供たちの自然認識については,子供なりの合理的な体系があり,それ自体で一貫を有していること, 子ども達が理科授業の中に持ち込む知識や信念の構造が,与えられた状況の中で構成する意味に影響を与えていること,が前提とされていた。この前提と本年度の調査研究の結果を踏まえると,生徒の実態を把握し,授業の中で彼らの知識や信念を変換させるためには,(1)子ども達のミスコンセプションの実態を正確に引き出し,子ども達の認識の深いところまで入り込むためのインタビュー法(事例面接法,事像面接法等)のより本格的な検討。(2)子ども達のミカコンセプションが正しい科学概念に変換していく様子を評価する手法の開発。特に,芸術や体育の分野で使用されているパフォーマンスアセスメント(パフォーマンスを評価)の応用研究。などが新たに課題となる。
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