研究概要 |
第2年次は,本研究の基礎的研究として,子どもの理解研究に寄与できる研究方法論に関する文献(Probing Understanding)を数名の若手研究者と共に翻訳し,「子どもの学びを探る」という表題の訳書として出版した。翻訳作業と並行して,本年度は,子ども達の理解の本質,及びそれぞれの調査方法の妥当性や信頼性についても吟味した。特に,子ども達の理解を探る方法論としては,「概念地図法」「事例面接法」「事象面接法」「描画法」「関連図法」「単語連想法」等について検討した。また,初年次から引き続き子どもの理解についての実態調査を行った。「電流概念」に関しては,簡単な電気回路の中で,電流消費的な考え方や電流二方向的な考え方が、電流を学習した中学生にもかなり見られること,かつ,小学校から中学校にかけてもそのような考え方は大きく減少しないことが明らかになった。「水蒸気の概念」に関しては,「沸騰している水の中から出てくる泡は空気の泡だ」と考える小学生が,水蒸気の学習をした後でも50%〜60%存在することが明らかになった。これらは,諸外国の研究成果と同様の傾向を示している。 また「子供たちの自然認識については,子供なりの合理的な体系があり,それ自体で一貫性を有している」,「子ども達が理科授業の中に持ち込む知識や信念の構造は,与えられた状況の中で構成する意味に影響を与えている」ことが実態調査から確認できた。しかし,2年次は子ども達の理解を探るための研究方法論の検討や実態調査に力点をおいたために,子ども達の合理的な体系や信念を変換させるための有効な授業ストラテジーの検討や子ども達の理解変容の評価法の検討が十分に行なえなかった。最終年度である次年度は、これらの点の検討を中心に研究を進める予定である。
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