研究概要 |
近年の理科教育研究の世界的な潮流である構成主義の立場によれば,子ども達の頭の中には学校での理科の学習によって習得することが期待される科学的な見方や考え方とは異なった説明の枠組みが存在することが明らかにされている。本研究では,構成主義的な立場に基づいた科学概念の形成に係わる素朴概念やミスコンセプション研究の総括を国内外の文献をもとに行い、翻訳書を出版した。(リチャード・ホワイト他著・中山,稲垣,片平他訳「子どもの学びを探る-知の多様な表現を基底にした教室をめざして-」)また,「粒子概念」や「化学反応の概念」の実態調査から得られているミスコンセプションの同定をもとに,日常世界において子ども達がこれらの概念に関して抱いているミスコンセプションの実態から子ども達独特のオルターナティブフレームワークについても吟味した。 さらに本年は,これまでの研究成果をもとに,素朴概念やミスコンセプションに見られる子ども達の多様な考え方や見方を授業の中へ取り込み,一人ひとりの子ども達の概念構成や概念変換を目指した理科教授のあり方を検討した。特に,(1)子ども達の素朴概念やミスコンセプションの実態を正確に引き出す方法論としての概念地図法,描画法,問いの生成法,パフォーマンスアセスメント等の可能性を探った。(2)子ども達の素朴概念やミスコンセプションが正しい科学概念に変換していく様子を評価する新たな評価法としてのポートフォリオアセスメントの可能性を探った。 これらの成果は,子ども達のミスコンセプションを記載した構成主義の立場からの科学概念の教授モデル構築のための貴重な情報を提供している。
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