1.研究経過:(1)第1回アンケート調査:大学への進学率が高い国、公、私立高校(70校)を、全国的に選び、高校3年の理系、文系各1クラスについて調査を行った。生徒への質問内容は家庭の影響、学校の理科教育、進路決定の要因、生徒の性格等について73項目、教師用アンケートは高校の種別、規模、理科選択者数、理系進学率等11項目である。59校(回収率84%)から5600枚の生徒用紙が回収された。集計結果は表やグラフにして、回答した学校に送り返し、また、国内、国際学会等で発表した。(2)学校訪問:回答校から10校を選び、訪問し、生徒や教師に面接、調査を行った。(3)第2回アンケート調査:第1回の調査結果、および、学校訪問による面接調査の結果を参考に、前回、回答した高校教師を対象に、61項目からなるアンケート調査を行った。59校中、37校から回答が得られた。 2.研究成果:(1)理系女子生徒の半数以上が医歯薬系を希望しているのに対して、男子の理系では20%足らずである。物理天文系は、理系男子の約10%、理系女子の約5%が希望している。進路決定の時期は性別や進路別によらず、高校1、2年が最も多く、次が高校3年である。将来の職業について決めている人の割合は、理系女子が最も高く7割近い。次が文系女子であり、文系男子が最も低く、約4割である。進路決定について、家族の影響は比較的低い。(2)理科の授業について「理科は、科学的な研究によって科学を実践することを学ぶべきだ」という意見を支持する生徒が最も多かった。実験に満足している生徒と、受験指導に満足している生徒では、学校差が大きく出た。地方の進学有名校では実験をしない所がかなりあることが、第2回アンケート調査で明になった。(3)理系進学を決定する際の要因は「科学を学ぶときの満足感」が最も多かった。学校別にみてゆくと、理科教師の影響が大きいことが判明した。現在の大学入試は負の要因となっている。
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