高校生および高校教師対象の大学理系進学に関する今回の調査・研究で次のことが明らかになった。1)約2割の生徒は小・中学校時代に進路を決定しているが、残りの大多数の生徒は高校時代に決定する。2)生徒の親や祖父母が理系である場合、小さい時から科学・技術や医学等に関心をもつ者が多い。3)理科科目の履修に関しては、学校によってカリキュラムが多様であるが、生徒自身の選択の幅は狭い。物理・天文系の生徒は自分の興味で選択し、医学系の生徒は受験科目との関連で選択している。4)理科の授業は、塾が少ない地方では受験を意識したものとなり、補習も行っている。実験をさせたり、課題研究をさせる時間的余裕がない。教師主導型の問題演習重視の授業になることが多い。5)実験を重視し、生徒中心の授業を行っている学校では授業に対する生徒の満足度が高く、科学に興味を持ち、物理の選択者も増えている。生徒は「科学的な研究によって科学を実践することを学ぶべき」で、また、「科学の技術のコンク-ルに参加する」ことを願っているが、現実にはあまり行われていない。7)高校の授業が理想的な学習からほど遠い現状をもたらしている主要な原因は、大学入試制度や大学が出題する難問のせいだと、多くの生徒も教師も考えている。8)理系進学の要因として最も大きいのは、「知的満足感」や「仕事から受ける満足感」である。「理科は人間の生活に関係することが多い」ことも要因となっている。9)理科の授業に成功している学校では、その授業が理系進学の大きな要因となっている。授業の実験的性質もその要因となっている。10)女子生徒の方が男子生徒よりも、将来の仕事を意識して、進路を決定している。11)諸外国と比較すると、日本の教育は伝統的な教師中心の教育であることが目立つ。生徒の性格は自立心に乏しい。これらは指導要領による束縛や受験体制の影響で強められている。
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