研究概要 |
問題解決戦略の多くは,高校数学の諸単元に含まれる教材に横断的に適応可能である.しかし,問題解決に直面している学習者にとって,それらの問題解決戦略が一般的な言い回しによって与えられたとしても,与えられた問題に対しての適用方法を直接連想することは困難である.平成5年度までの研究によって,問題解決戦略をそのような一般的なものと,各単元への関連づけによって表現することが適当なものとに分類することの必要性が示唆された.また,初期状態において自然言語で記述されている問題を数学的表現に翻訳する過程における学習支援の重要性も認識された.この問題把握のための過程において,ある程度の学習支援を行うことは,学習者の思考経路,問題解決経路をシステム側で把握するためにも必要となる.このために,学習者に大して,着想のキーとなる問題文中の部分を自己申告させ,その入力情報によって学習者の問題把握時における思考をシステムの動きに反映させる方法がとり得る.具体的なシステム上では,問題把握過程,問題戦略立案過程,問題解決戦略適応過程,問題解決実行過程のそれぞれにおける学習支援形態に関して,利用者インターフェースを中心とした基本設計が概ね完了し,各教材に依存する学習支援用データの内部表現に関して現在検討を進めている.平成5年度の成果は次のように纏めることができる.まず,メディアインテグレーション化の進んだコンピュータシステウの教育活用可能性についての分析を進めることができた.また,教材の分析に関しては,試作システムの実現に伴う問題解決戦略との関連づけ,その支援方法に関して,きめの細かい分析が進捗している.この教材分析の結果,学習者の戦略的な問題解決の過程を1つのモデルとして得ることができた.今後,この問題解決過程のモデルをベースとして,モデルそのものの改訂をも含めた,教材および支援方法を拡充,強化を進める.
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