研究概要 |
授業の過程は、授業事象に対する教師の認知とそれによる教師の意思決定に基づく授業運営の過程である。従って授業過程に及ぼす教師の力量は直接的には、授業過程での授業事象の認知力と意思決定に基づく授業の運営力であるといえる。この授業認知過程に影響を及ぼす第一の要因である授業事象の認知力は,教授内容に対する教師の理解状態と子どもの学習状態の把握が大きく影響していると考えられる。本研究ではそこに着目し,子どもの学習成果を教師がどのように把握しているかを,目標準拠テストを利用して把握するとともに,子ども自身が自分の学習をどのように自己評価しているかを把握し,この両者から教師の授業認知とその力量の過程を検討した。その結果,次のことが明らかになった。 1 教師の力量形成はほぼ次の3段階を経て形成される。 第1段階:「教授事象がよくみえないため,学習の成立,不成立の事態がよくみえず,適切な手をうたない状況」である。授業者は授業をした事実と子どもがが学んだことを同一視しがちで,教えたので学んでいるはずと受け取っているが,実際にはかなりの子どもが学んでいない状況である。 第2段階「教授事象は見えるようになり学習不成立の事態は分るが,授業改善に有効な手がそれほどうてないまま授業が進行してしまう状況」である。 第3段階:「教授事象がよくみえ,対応する手だてをうつことができ,成果もあがる状況である。 2 教師の授業認知は,教師の授業内容の理解状況によって異なること,また,成績上位と下位の子どもの見取りはできるが,中位の子どもの見取りが不得意である。
|