本研究は、成人に対する遠隔教育メディアとしてのコンピュータの有効性を検討し、最終的には、コミュニケーション・インターフェイスの改善に役立てることを目的とする。平成5年度は、対面型コミュニケーションとの比較により、コンピュータ・コミュニケーションの特性を明らかにした。コンピュータ・コミュニケーションの主たる特性は、以下の通りである: 1.1発話に含まれる情報量が多い。 2.コミュニケータの個人的エピソードへの言及が少ない。 3.冗長度が低い。 4.論理的整合性が高い。 平成6年度は、こうした特性をふまえまがら、コンピュータ・コミュニケーションを用いた実際の遠隔教育(ニュージーランドで在外研究中の指導教官による、日本の大学院生への修論研究の遠隔指導)の事例を観察し、教師への自己開示や心理的距離といった側面にも焦点を当てて検討を行なった。その結果、以下の諸点が明らかになった: 1.コミュニケーションを妨害する最も深刻な問題は、現時点での通信技術に関するものである。通信の技術面での改善(初心者にも扱いやすく、トラブルの少ない通信環境の保障)が急務である。 2.コンピュータ・コミュニケーションだけで終始指導を行なうことは、現実には無理がある。少なくともある段階までの指導が、対面コミュニケーションによってなされていることが必要である。 3.コミュニケータの心理的距離を縮めるためには、ネットワークを通じての音声情報のやりとりなども効果的である。
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