(1)各都道府県における特殊教育の整備状況と「無業者」問題との関連については、学校基本調査記載のデータ分析をすることで明らかにした。しかし、「無業者」問題は、必ずしも特殊教育の整備状況という単一要因に規定されないことも明らかになった。むしろ、「無業者」問題は、通常学級卒業生では、高校などの進学先定員が、75条学級卒業生では、高等養護学校や養護学校高等部の定員に多く関連している。 (2)各都道府県の特殊教育の整備状況を把握するために都道府県の特殊学級設置基準を調査した。しかし、1名でも対象者が存在すれば特殊学級が開設できるようになっている地方自治体が、特殊教育への就学で充実しているということではなかった。 (3)「無業者」問題と後期中等教育機関の整備状況との関連については、宮城県をケースとして取り上げて分析をおこなった。この両者間には、かなり強い関連があることから、中学校卒業時に「無業者」をださないためには、後期中等教育を希望するすべての者に開放することが重要な施策の一つであることが明らかになった。 (4)通常学級で学ぶ障害児の実態と就学指導の問題については、東京都下多摩地区校長会の調査結果をもとにして分析した。通常学級への障害児の就学は、経年的に分析するかぎり、必ずしも増加しているわけではないことが判明した。 (5)比較教育学的研究として、合衆国のニューヨーク州およびマサチュセッツ州の特殊学級整備法制と日本のそれを比較し、日本の特殊学級整備法制の改善点をあきらにすることができた。また、病気療養中のまま中学校卒業することで「無業者」になる生徒が存在することから、合衆国におけるMFC(医学的に脆弱な子ども)の教育保障が如何になされているかを比較教育学的にとりあげ纏めた。
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