本研究は、今日伝えられし自然遺産と文化遺産とを基にした美術特に工芸の教育的展開を検討し、社会教育・学校教育における実施を計るものとして平成5年度より進めて来た。研究を進めるに当り、社会状況、現代美術の動向を踏まえ 生涯学習社会における美術特に工芸の存在意義を確認し、自然遺産、文化遺産における思索を行うことよりはじめた。 しかしながら 日本の特定地域の選定において十分なる調査資料を得ることができず、地域の文化遺産、自然遺産及び美術教育状況についての把握を行った上での研究には至らなかった。しかるに木工芸における主題・素材・技法よりの捕え直しと、それぞれを起点とする発想の可能性への思索を行い、全国的に身近な自然としての街路樹、庭木等における多種多様な樹種と形態を活用する具体例を検討することに重点を置いた。特にこれまでその技法にこだわるが由に工芸の特性を十分に生かすことができずに来たことを明らかにし、主題・素材・技法の各因子の組み合わせを十分に考慮することで美術としての木工芸の表現の目的と巾において可能性を大きく広げ得ることを確認できた。 以上の事より、本研究の継続を平成7年度一般研究cとして同名の題目において申請している。
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