本研究の目的は、教科の学習における子どもの認識活動と教科教育の背景にある文化内容との関連を明らかにし、教科教育のあり方を再検討することである。これまでの研究では、認識活動の分析として心理生理的活動のうち脳波の周波数帯域による分析を行ってきた。本年度の研究では、おもに認知心理学、実験心理学等の関連文献を収集整理するとともに、脳波の中で事象関連電位(Event-Related Potentials:ERP)について検討を進めた。脳波測定実験では、子どものかわりに大学生12名を被験者とし、下記のような音声刺激に対するERPを測定分析した。脳波の導出部位は前頭部(Fz位)、頭頂部(Cz位)、後頭部(Pz位)とした。 1.周波数の異なる発信音(1音及び2音)に対する注意とERP変化 2.清音2音節単語の有意味性に対する注意とERP変化 3.清音2音節単語の意味関連性に対する注意とERP変化 その結果、周波数の異なる発信音に対して被験者のERP反応のうち、NdおよびP300が注意課題に対して有意な差が見られた。また、2音節単語の有意味性については、Nd及びP300などのピークの特徴から、低意味性(なじみの少ない)単語群と高意味性(よく見慣れた)単語群に差が見られた。同様に意味関連性についても、高意味度単語群については、ピークに特徴が見られた。 これらの事象関連電位はこれまで3部位からの測定を行ってきたが、さらに多くの部位について検討する必要がある。今後は、多チャンネルの研究を進めるとともに、視覚刺激や具体的な対象に対する認識について研究を進める計画である。
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