研究概要 |
本研究の目的は、教科の学習における子どもの認識活動と教科教育の背景にある文化内容との関連を明らかにし、教科教育のあり方を再検討することである。これまでの研究では、認識活動の分析の一指標として、心理生理的活動、特に脳波の事象関連電位)(Event-Related Potentials:ERP)について検討を進めてきた。 本年度の研究では、子どものかわりに大学生を被験者とする脳波測定を行い、下記のような意味情報や画像情報を提示したときのERPを分析した。ERPの分析は1名の被験者に対して同一又は同種の情報を30回繰り返し提示し、それらを加算平均することによって情報(刺激)に対する1秒間の脳波の反応を抽出するようにした。情報提示の方法は,音声(聴覚)による場合と映像(視覚)による場合を行いそれらを比較した。提示時間はいずれも400msとした。なお、脳波の導出部位は前頭部(Fz位)、頭中心部(Cz位)、頭頂部(Pz位)に加え、本年度からデータ処理装置(日本光電社ATAC-3700)のボード増設を行い、後頭部(Oz位)、側頭部(C_3位、C_4位)の6チャンネルとトリガー2チャンネルの8チャンネルの解析を可能とした。 (1)清音2音節単語の有意味性に対する注意とERP変化(聴覚、視覚) (2)清音2音節単語の意味関連性に対する注意とERP変化(聴覚、視覚) (3)画像(昆虫の写真)に対する注意とERP変化(視覚) その結果、清音2音節単語の有意味性については、N200及びP300などのピークの特徴(潜時と電位差)から、同一単語群(1)の有意味性において低意味性単語と高意味性単語に差が見られた。意味関連性(2)についても同様な結果が得られた。また、画像(3)に対するERP変化は、被験者に与えた課題(画像の共通性の同定)によって大きく異なることが明らかになった。今後は、さまざまな情報に対するERP反応の分析に発展させたい。
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