研究概要 |
本研究は,平成5年度からの継続研究であり,成人のアマチュア音楽活動を研究対象とし,参加者が特定の音楽活動に参加し,継続する過程を明らかにすることを通して,成人の音楽活動に対する学校の音楽科教育や課外教育,学校外の私的音楽教育等の位置づけを行なうことを目的としたものである。平成6年度は,主に以下の諸点について調査研究を遂行した。 (1)国民の余暇活動に関する既存統計資料(「社会生活基本調査」等)を整理・分析して,成人のアマチュア音楽活動参加者を性別,年齢階層別,地域別等の属性別に量的に分析した。 (2)アマチュア合唱団の団員を対象に過去の音楽学習・音楽活動歴に関する質問紙調査を実施し,活動への参加と継続の過程を分析した。 以上の研究を通して,アマチュア合唱団参加者の多くが学校時代の音楽科の授業に積極的に臨み,成績も上位2〜3割の層に属しており,音楽科教育にきわめて適合的であったと考えられること,課外の音楽活動にも小・中学校時代から参加していた者が多いことを明らかにした。さらに,アマチュア合唱団参加者は稽古ごとのような学校外での私的な音楽教育を受けた経験のある者が多く,このことから,公的音楽教育への強い適合性が私的音楽教育によって支えられていた可能性を指摘した。この研究の過程から新たに導き出された課題として,公的音楽教育に強い適合性を示さなかった層は成人になってどのような音楽生活をおくるのか,公的音楽教育と私的音楽教育は教育内容面においてどのように役割分担されてきたのかといったことが挙げられる。
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