生涯スポーツ構想の実を上げるための基礎研究である。具体的には、各小中学校の体育・スポーツ施設を曜日を限定してコミュニティーの共有的社会資本とする考え方の可能性を検討することが目的である。初年度計画として広島県福山市を対象地域とする調査とインタビュー調査を実施した。福山市は人口36万人程度で商工業都市ではあるが、農山村部、漁村部も含む代表性の高い地域といえる。 福山市は、小学校区62、中学校区27で、各小学校区に比較的自治性の高い学区体育会が既に存在して活動している。これらの各小中学校責任者(校長・教頭)と学区体育会の責任者(会長・事務局長)にアンケート調査をするとともに、本研究の構想について説明し、賛否を問うた。さらに、この構想に理解を示した地域を中心にインタビュー調査をおこなった。これらの結果を要約すると以下のようになる。 1)学区体育会は地域連合型学校開放の構想を評価しているが、小学校中学校の責任者は否定的である。 2)小学校中学校責任者は、学校施設の開放を否定しているのではなく、責任体制の未確立を問題視している。 3)インタビュー調査の結果、既に一部で本研究の構想を先取りした事例が報告された。それは責任体制が明確で学校サイドからも信頼されているグループや組織に限られている。 4)コミュニティースポーツは、行政単位や上からの指示のみでは成功せず、むしろ同好会的なものの育成と学校体育・スポーツ諸施設使用との連けいがはかられるべきである。
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