昭和40年代に開始された学校開放による地域スポーツ活動には、いくつかの限界がみえはじめている。小学校区を単位とした活動は、昨今非常に活発化する一方で、活動団体が固定化したり、スポーツイベントを中心に展開される傾向がみられる。本研究で構想した『地域連合型学校開放事業』は、視点をかえて中学校区を中心にして構想され、またイベント主義ではなく、日常生活化の拠点づくりという意味で『地域スポーツ・クラブ方式』を採用したところに特徴がある。こうした構想の実現化にむけて、可能性や問題点をさぐることが目的であった。 平成5年度には、広島県F市を対象にすべての小中学校管理者と学区体育会と呼ばれる地域スポーツの統括団体の責任者にアンケート調査をおこなった。その結果の概要は、学校サイドは本研究の構想を余り受け入れず、学区体育会は賛同を示す傾向がうかがえた。ただし、中学校区の全組織で二の構想を受け入れると回答した地区はなかった。 そこで平成6年度にF市M中学校区に出向き、学校関係者3名と学区体育会の責任者2名に個別に面談調査をおこない、より深く生の反応を求めた。学校とりわけ中学校はスポーツ部活動を重視しており、これには影響を与えないことを強く希望する。学校開放にも責極的に協力しているとする態度が強い。地区体育会も、学校のスポーツ部活動のじゃまはしたくないし、イベントへの参加様態が必ずしもうまくいっていない状況の説明があった。逆に本研究の構想は、一部でクラブ方式で実現されていて、その既存のクラブの既得権を学校サイドが認めていることもわかった。学校は、子ども達のものという感情は双方ともに根づよく、地域活動のセンターという考え方は一部にしか認められない。モデル実施までもっていくための要件が整わなかった。どうしても一定の行政的投資が前提とされる。
|