本研究によって以下の点で新たな知見を得ることができた。 1.本研究が対象とした占領期の歴史教育については、これまで、社会科教育との関連の中で実証的に位置関係が整理されていなかった。この点について、本研究では、戦後の歴史教育の潮流を4つに分類し、その時期区分と三つに整理し、この根拠を占領期における各々の歴史教育にかかわる実証的分析の中で示すことができた。 2.1.で示した占領期における歴史教育の4つの潮流の中で、これらが相互にかかわった場としての「中等国史教科書編委員会」について、この委員会設置の背景、委員構成、審議過程等について、これまで明らかにされてきた和文資料に加え、本研究で新たに分析したCIE文書と比較対照させながら、より客観的・実証的な分析ができた。 3.「中等国史教科書編集委員会」が作成した教科書原稿については、これまで、その実物が確認されていなかったが、本研究においては、ボウルズ文書中にある英文タイプ原稿を、本委員会原稿として確定し、その全文を和訳し、内容を詳細に分析、検討した。 4.本研究においては、3.でとりあげた「原稿」を、当時、この委員会に関係する人々によって書かれた二つの歴史教科書(および原稿)と比較し、相互の相違点、類似点を明らかにする中で、種々の歴史教育の全体象を実証的に明らかにすることができた。 以上、4点にわたって、本研究の独創系成果として報告することができる。
|