本研究の研究計画調書に述べたように、現在までのステレオロジーに欠けている点を補って新しいステレオロジーを目指すことが本研究の究極の目標であるが、われわれの基本的に新しい視点は、対象相互の空間的配置を、相互作用モデルやそれの特別な場合である剛体球モデルを用いて統計的に捉え、それをストレオロジーの枠組みに取り入れることである。これらの空間構造モデルを理論的に取り扱うのは困難であるが、それは計算機シミュレーションを系統的に用いることで解決できる。平成5年度においては、当初の研究計画に基づいて現有の計算機プログラムを用いてソフトコア相互作用粒子系・剛体球系のシミュレーションを重ね、データを大容量記憶装置に集積した。2次元平面のデータはステレオロジーの方法開発に必要な所期の目標を蓄積したが、3次元データを現在計算中である。また、平成5年度は非球粒子(楕円や長方形)のランダム充填構造モデルの計算機シミュレーションを行うことを新たに開始し、その計算プログラムを開発して、若干の計算結果を得た。その結果について9月にスペインで開催された「第6回確率幾何学、ステレオロジー、画像解析国際ワークショップ」で招待講演を行った。非球粒子の高密度構造のシミュレーションは現実的粒子のステレオロジーの構築にとって重要である。
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