現実の生物細胞・金属組織中では粒子が密にしかもランダムに詰まった状態が実現されており、新しいステレオロジーの構築にはその空間構造のモデルが不可欠である。このモデルを理論的に扱うのは基本的に困難であるが、この困難は計算機シミュレーションを系統的に用いることで乗り越えることができる。しかし、そのためのシミュレーション法を開発する必要がある。 このような観点から、本研究計画では粒子による高密度のランダム空間配置のシミュレーション法を中心に研究を推進してきた。 平成5年度は、任意の半径分布をもつ粒子系の高密度ランダム構造を構成するための新しいシミュレーション法を、3次元で実現する計算プログラムを完成した。また、非球粒子(楕円や長方形など)のランダム充填モデルの計算機シミュレーションを行い、その結果をスペインで開催された国際ワークショップで講演した。 平成6年度はより現実的な粒子のモデルの広義のステレオロジーを構築を目指して、前年度に開始した非球粒子の密構造の研究を中心に進めた。まず、現実に観測される対象の多くが向きを持つことから、非球粒子の方位が示す空間パターンを解析するための、われわれが開発した統計的方法に関して、8月にカナダで開催された国際計量生物会議で発表を行った。 また、楕円の規則配置の密度に関して_P3充填と呼ばれる結晶群の場合を理論的に解析して、その結果を印刷公表する準備をし、現在印刷中の段階である。この問題は、楕円のランダム構造と密接に関連しており、またそこでの理論がランダム密構造のシミュレーションの計算プログラムを作成する上で役立った。 そして、最後に楕円や長方形の粒子系の、マルコフ型モンテカルロ・シミュレーションのプログラムを完成して若干の計算結果を導くことができ、新しい知見を得た。この結果は統計数理研究所の共同研究会などで発表した。
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