研究概要 |
1.数式処理システムの必須の機能である多項式の因数分解について,算法の研究と計算機実験を幅広く行った. (a)因数分解の算法としてBerlekamp算法が良く知られているが,この算法のベクトル処理への適合性を実証するために,他のいくつかの算法と共にベクトル処理スーパーコンピュータ上に実現し,実験,比較を行った. (b)その結果,従来あまり注目されていなかった決定的算法が,非常に高い実用性を有することが判明した.また,その試作ソフトウェアは,既存の数式処理システムに比べ遥かに高速であるばかりでなく,従来まったく試みられてもいなかったような規模の(高次の)問題をも,実用的な計算時間で解きうるという結果が得られた. (c)さらに,この研究の延長として,現在全世界で稼働中の最大規模のスーパーコンピュータシステムを用いた場合,どの程度の規模の問題まで解きうるかを明かにするために,最新の算法とその実現法についても研究を行っている.この点に関しては,因数分解の算法がどのような手続きから構成されるかについての新たな知見を得ることができ,その結果,その最新の算法を改良した実用的により良いと思われる算法も新たに考案している.これについては,計算機実験と論文を準備中である. (d)次項の多項式補間の算法で必要となる多項式因数分解について,並列処理の各種実験を行った. 以上について,国内の研究会やワークショップにおいて,適宜報告を行っている. 2.多項式の補間法は,スーパーコンピュータを用いたデータ並列処理により得られる数値群から式(多項式)を決定するために用いうる.そのための新たな算法を開発した.その算法をREDUCE上に実現し,また,その一部分に対し並列処理を施す実験を行った.これらについて,国際会議で発表を行った.その結果,新たな算法自身について,かなり技巧的ではあるが,従来使われたことのない新たな方法を用いているとの評価を得た. 3.ベクトル処理や並列処理と数式処理とを融合し分散処理の形態を実現していくことを目的として,Risa/Asirのネットワーク透過なプロセス間通信の機能を強化するための実験・評価を行った. 4.その他,数式処理用の様々なソフトウェア部品を作成し,ベクトル処理への適合性等の評価・検討を行った.
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