研究概要 |
項書き換えシステム(TRS)の重要な性質に合流性があり、これまでの研究により、TRSが有限停止性又は線形性をみたす場合について,多くの成果が得られていた.他方,TRSが非停止かつ非線形の場合にはほとんど研究されずにきたが,最近,本研究者らによって,書か換えグラフを用いる手法及び条件付TRSを用いる手法が新たに導入され,合流性に関する幾つかの新しい結果が示された. 本研究では,非停止かつ非線形TRSの合流性に関する研究をさらに発展させることを目的として,前年度から研究を行ってきたが,前年度では合流性を保証する判定可能な十分条件を幾つか導くことに成功した.本年度においても引き続き合流性に関する研究を行い,まず,系列正規化可能性という概念を新たに導入することにより,これまでに提案された異なる2つの手法,即ち,書き換えグラフを用いる手法と条件付TRSを用いる手法の統合化が可能であることを明らかにした.次に,この統合化により,従来の結果を拡張した,合流性を保証するより一般的な条件を明らかにした.さらに,非停止かつ非線形TRSの合流性に関する従来の結果が右線形TRSの部分クラスに限定されていたのに対して,本研究では右線形ではないTRSについても考察し,強い深さ保存性をみたすTRSのクラスにおいて,非E重なり性が合流性を保証する十分条件であることを初めて明らかにした.この結果を得るために用いた手法はE重なりがある場合にも適用できるものであり,今後のさらなる研究の発展に役立つものと期待される. 以上の本研究の成果より,合流性に関する研究において所期の目標を十分に達成することができた.さらに,TRSの簡約化戦略及び関数型プログラムの効率の良い実行系を実現する方法についても基礎研究を行い,新しい知見を得ており,今後の成果が期待される. 以上の本研究の成果を取りまとめ,報告書を作成した.
|