本年度は、トップダウン情報を用いた画像処理そのものを汎用化した「制約充足型画像処理」の概念を提案し、基礎的な実験を行った。その概要は、以下の4点である。 ●どのような対象物を抽出したいのか、どのような結果が望ましいのか、を画像処理を行うシステムに与えることが必須であることを様々な例題から検証した。 ●制約充足型画像処理を具体化するために、どのような形で制約が表現できるか、について検討を行っている。制約表現に対する要求条件は、人間や認識プロセスが自然な形で制約を表現できることであり、このためには、概念レベルに近いシンボルレベルでの制約の表現が必要である、と定義した。また、与えられた制約が画像処理をうまくコントロールできるものとして、画像の特徴量を用いた制約が適当であることを実験により検証した。その結果、これらのレベル間のマッピングが必要なことも明らかになった。 ●様々な状況において制約充足型画像処理を実現するために、与えられる制約をその確信度にしたがって3つに分類した。この分類により、処理をコントロールするメカニズムを変化させ、適応的なシステムを構築するための枠組みを明確にした。 ●研究室のワークステーションで、制約充足型画像処理の実例を2例実装し、検討を進めた。 この結果、画像処理アルゴリズムそのものをWHAT型(何がしたいかを指定する)にできること、すなわち、何がしたいかを制約として与えることによって画像を処理するアルゴリズムが作成できることが、明らかになっている。来年度は、実験を中心にしてこのことを実証する予定である。
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