研究概要 |
1.肺癌陰影検出用ソフトウェアを開発し,肺癌陰影のデジタルパラメーターについて検討した。肺腫瘤影を検出するために,指向性コントラストフィルタ(DCF-N)を開発した。小型肺癌例計193例の胸部単純像を用いてDCF-Nによる腫瘤影の検出について検討した。候補陰影は特徴量の高い順に20個が抽出され,腫瘤影がその中に入れば検出されたとした。193例中171例(88.6%)は検出され,うち149例は1〜10位に入り,22例は11〜20位に入った。腫瘤影は候補中平均5.4位であった。DCF-Nは,肺腫瘤影検出に関して高い検出能を有していることが判明した。 DCF-N処理で得られた肺癌陰影(181部位)のパラメーターを,血管影同士の重なり群(1045部位)および助骨同士の重なり群(730部位)と比較した。3群間で平均値に有意な差がみられ,コンピュータ処理によるデジタル情報を加えることによって,腫瘤影と偽陽性陰影の鑑別が容易になる可能性が示唆された。 2.間質性肺炎,肺気腫における胸部単純像のコンピュータ画像処理に適した空間分解能および濃度分解能について検討し,空間分解能は0.1mm,濃度分解能は10bit程度が必要と考えられた。 3.胸部単純像上での気腫性病変をデジタル的に評価法する方法の開発について検討した。これは助間に関心領域を設定し,2重円コントラストフィルタによる血管影の強調,閾値処理による血管影の抽出,および図形融合による枝や孤立点の除去によって距離変換を用いた血管影の太さを測定するものである。本法による臨床画像の評価は,平成6年度に行う。 4.医師による読影実験を行い,腫瘤影の検出に影響する因子について検討した。検出率は,腫瘤影自体の濃度よりも腫瘤影とその周囲との濃度差(比)に強く影響されていた。また腫瘤周辺部の性状(濃度差エントロピー)も影響していると考えられた。
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