本研究は簡便な手続きで入力された有機化合物の構造式を、正しい命名法に従った名称に変換するための知的コンピュータプログラムシステムの作成を目的としている。このシステムは、構造式のグラフィック入力、構造式-名称変換及び知識ベース管理の三つのプログラムから構成される。現在広く使われている体系的な命名法としてIUPAC法があり、詳細な規則によってあらゆる構造式に対して命名が出来ることになってはいる。しかし、これらの規則は羅列的で煩雑極まり無く、しかもそれを充分に教授する時間的な余裕が教育の現場に於いて無くなっているのが現状である。したがって自信を持って正確な命名の出来る化学者の数は非常に少ないものと思われる。本研究はこの問題の解決を目指したもので、以下の6つのサブシステムによって構成される。 1.構造式のグラフィック入力及びコンピュータ処理可能な結合表表現への変換 2.特定の名称要素を持つ部分構造(官能基)の命名の為の知識ベース 3.構造式中の環系の認識及び環部分と鎖状部分の分割 4.環部分の命名(芳香環、ヘテロ環、及び脂環を別々に処理する) 5.鎖状部分の命名の為の知識ベース 6.完全な名称の生成 これらのうち、平成5年度に1、2、3の一部、および5、6のサブシステムを作成を行い、鎖状構造式の命名が可能なシステムを構築した。本年度は主として4のサブシステムの作成を行い、また各サブシステムの整合性を取って、鎖状構造式および環を含む一部の構造式の命名が可能なシステムを構築した。
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