研究概要 |
本研究は,郵便型の暗号通信の実現を目指したID情報に基づく暗号システムの研究である.まず名前や住所,電話番号などの個人に固有の情報,すなわちID情報に基づく予備通信を必要としない鍵共有システムの実現法の研究を行い,RSA暗号により2ワード暗号化するのと等価な計算量で共通鍵が生成できる簡明な鍵共有法を発見した.その結果,共通鍵暗号系の最大の問題である鍵共有の問題を見事に解決し,操作性のよい共通鍵暗号系の適用を容易にした.その核心となる鍵共有部分の独創的な発想はつぎの三つである. (a)安全性の根拠を素因数分解の困難さに起因する計算量的安全性においている.(b)鍵共有の際に指数演算を実行した時にはじめてユーザ固有の乱数が消去され,鍵生成者は相手ユーザの秘密情報と等価な情報を陰に生成可能であること.(c)各種の連立方程式を立てて,それらを解くことによりセンタ秘密やユーザ秘密を求めたり,あるいは第三者間の共通鍵を生成しようとしても,必然的に素因数分解を求める問題,またはそれと等価なべき乗根を求める問題に帰着する.また,これらの三つの点が上述の鍵共有法の安全性を保証することになる.このように安全なID情報に基づく鍵共有法が確立されると,ID情報に基づく暗号系,ID情報に基づく相手認証,電子投票システム,鍵管理システム,など各種暗号システムへの応用が考えられるが,これらの具体的なシステムについては平成6年度の研究課題としたい.
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