初年度に、文献調査と、予備データをとるための実験的会議をまず行なった。次の年度に、この予備実験を受け、本格的なシステム作成、評価実験、学術雑誌論文の作成と投稿を行なった。 文献調査では、本研究が目指しているようなコミニュケーションのモデル化を通したシステムは多くないことが分かった。次に、主にビジネススクールの学生による同一の議題の実験的会議を6グループで行ない、ビデオに録画して分析した。この結果、我々がメタ発言と名付けた議事進行の発言と、オブジェクトレベル発言と呼ぶ議事の内容に関する発言とが混在して参加者が混乱すると、会議の障害になっていることが分かった。そこで、会議における発言を文脈(context)と内容(content)とにキーワードを用いて自動的に分類するアイデアを基に、二つのシステムを作成し、評価実験を行なった。文脈を追跡する部分は、企業の中間管理職に発言の分類等を行なってもらい、本アルゴリズムの信頼性が極めて高いことが分かった。次に、あらかじめ情報の断片に付けたインデックスと、やはり発言中のキーワードとを使って、状況に応じて必要な情報だけを取り出すシステムを作成した。評価実験によって、これも、自動的にできることが確認できた。研究成果は、研究分担者の高木が電気学会論文誌に、試作システムの関連を永田が二つの国際会議報告電子情報通信学会の英文論文誌に、受理された。また、両者連名の論文が、国際学術雑誌Journal of Organizational Computingに採択されて印刷中である。 本研究によって、コミニュケーションモデルを通して、電子的または対面の会議の参加者が名場面で必要とする情報を自動的に提示するシステムの実現可能性を示すことができた。
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