本研究は、聴覚障害者の日常機器・環境における生活実態を、情報伝達形態の側面から考究するものである。調査は、日常生活機器全般から自動車の運転、地下鉄、病院などの社会的環境に至るまでを対称として実施した。 聴覚障害者(筑波技術短期大学生)61名を対称としたアンケート調査と、ビデオカメラを使用した日常生活機器・環境の実態調査によって、以下に示すような聴覚障害者に関わる「生活-環境・道具系」の特質を明かにした。 1)聴覚障害者は、同年齢の健聴者に比べて4〜6割の情報を取得していると感じている。 2)機器・環境30項目中、聴覚障害者問題の大きさを、(1)電話機(2)テレビ(3)病院の受診(4)オ-ディオ機器(5)ウォークマンなどの順でとらえている。 3)情報取得要求の背景として、(1)テレビ情報が少ない(2)いつも情報把握の充実感がない(3)聴覚情報の欠如(4)情報取得努力の欠如、などを挙げている。 4)A:コミュニケーション、B:楽しみ、C:操作性、D:安全性、E:プライバシーなど、各問題評価項目ごとには、A:(1)電話機(2)病院(3)教室(4)テレビ、B:(1)テレビ(2)オ-ディオ機器(3)ウォークマン、C:(1)振動目覚まし時計(2)風呂を沸かす(3)自動車の運転、D:(1)ガスコンロ(2)自動車の運転(3)風呂を沸かす、E:(1)ファックス(大学宿舎内)などが挙げられた。 5)多変量解析(数量化3類)を用いて、聴覚障害問題の空間(X軸:人権・コミュニケーション・自立、Y軸:安全性・操作性)に、機器・環境群をプロットし、それらの類型化と問題の特質を明かにした。
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