本研究では、自動車に起因する都市問題・環境問題が既に進行しつつあるわが国の大都市を対象として、実行可能な自動車抑制策を示し、それを実施した場合の影響と効果を計測することによって、緊張を要するこの課題に対して具体性のある知見を得ようとした。 今年度は、申請者が従来から行ってきた、種々の自動車交通抑制策の長短所の把握や導入の根拠の明確化に関する定性的分析を踏まえ、実効可能性のある方策をとりあげて実際の影響と効果を明らかにした。具体的には、適正化方策を緊急に実施すべき地区として、大阪市中心部へ北部地域から通勤・業務交通が流出入する数本の幹線道路が存在する地域を抽出し、またこの地域における具体的施策として、都心への流入車両に対して料金を課すことで交通量の抑制を促すロードプライシングを選定した。 そして、この方策の影響と効果に関する分析を以下の手順で行った。 (1)対象地域の交通に関する分析:パーソントリップ調査データを用いた交通量の変化予測シミュレーションを行って、自動車交通量と公共交通利用者の変化等の、交通に及ぼす影響を定量的に把握した。 (2)対象地域の都市環境と都市活動に関する分析:排出される有害物質量の変化等、都市環境に及ぼす影響や、都市間のアクセス性の変化等の都市活動に及ぼす影響を把握した。 (3)主体別キャッシュフローに関する分析:自動車利用者、公共交通利用者、一般納税者等の主体別に費用と便益の収支を、具体的に概算した。 (4)総合的な評価と研究のとりまとめ:上で示した分析を踏まえて、選定した具体的方策について総合的に評価するとともに、研究から得られた知見と今後の発展の方向について整理を行った。
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