和歌山県の農山村部を研究対象地域として、以下の研究を行った。 1.市町村単位での既存統計資料の分析により調査対象町村を選定するとともに、選定町村に対する詳細調査に基づき作業仮説を設定した。 2.調査対象地区として、日高郡美山村寒川地区を選定し現地調査を行い、寒川地区全体の「空間システム」、集落を単位とする「社会・経済システム」、家を単位とする「生活システム」の実態とその変化を把握するとともに、先述した作業仮説の検証を行った。 3.以上に基づき、寒川地区全体としての地域システムの実態とその変化過程、変化要因を整理するとともに、今後、高齢化・集落人の減少とともに顕在化が予想される問題点を抽出し、それら問題への対応策を整理し、集落維持システムとしてまとめた。またこのシステムの有効性・妥当性等について関係者の意見を求め、それに基づきシステムの一部を修正した。同時にこの調査からサブシステムとしての文化システムの重要性を認識した。 4.集落維持システムの既存事例として集落再編成事業をとりあげ、西牟婁郡大塔村を対象とし、同事業の実態を把握し、その評価を試みた。とりわけ平成5年度の研究では欠けていた文化システムに焦点をあてた調査研究を行った。 5.具体的には、集落再編成事業完了後、18年を経過した大塔村下附団地を対象とした調査により、移住地での新たなシステムの形成過程を把握するとともに、文化システムとしての共同の体験・シンボルの必要性を明確にし、今後の新住宅地形成に際しての示唆を得た。
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