研究課題/領域番号 |
05680353
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石崎 武志 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (80212877)
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研究分担者 |
溝口 勝 三重大学, 生物資源学部, 助手 (00181917)
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20113623)
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キーワード | 凍上現象 / 不凍水 / 氷晶析出 / アイスレンズ / NMR |
研究概要 |
本年度は、多孔質体試料を用いた凍上実験とNMR法を用いた凍土中の不凍水膜厚さの温度依存性に関する実験を継続するとともに、そのまとめを行った。これに加えて、分子動力学(MD)を用いた不凍水の挙動に関する数値実験、電場の下での凍土中の不凍水の移動に関する実験と解析を行った。 1)部分的に凍結した多孔質体のフローズンフリンジ(部分凍結領域)中の不凍水流を示す凍上モデルを作成した。この凍上モデルを用い、部分凍結した多孔質体中のアイスレンズの成長速度、凍上量、凍上速度等を計算したところ、測定結果を良く再現することができた。今後は、この凍上モデルを実スケールの地盤凍結に適用可能なものへと発展させ、現在行っているフィールドでの凍上観測結果と比較しつつ凍上予測モデルを確立する。 2)不凍水の基本的な性質を明らかにするために、内径が4、10、30、50nmのポーラスグラスの不凍水分量の温度依存性をNMR法を用いて測定した。FID(自由誘導減衰)の測定時間を従来使われている0.2秒の他に5秒として測定することにより緩和時間の短い吸着水と緩和時間の長い間隙水とを分離して測定できることが分かった。これらの試料の電子顕微鏡写真、窒素吸着による比表面積、細孔分布を測定し不凍水膜厚さとの関係を求めた。 3)不凍水のミクロな挙動を明らかにするために、分子動力学法を用いて計算機実験を行った。系を簡単にするために今回は固定壁面に挟まれたアルゴン流体の挙動を計算し壁面が流体の運動に及ぼす影響について検討した。計算結果から、壁面の存在により流体系の構造はバルクに較べて秩序化し、拡散係数はバルクな状態に較べ1オーダー小さくなることが分かった。 4)粘土粒子には表面電荷が存在するために、それと接する土壌溶液中には拡散2重層が形成されている。そのため凍土に電場をかけると不凍水の移動が起こる。実験から不凍水は電気浸透によって陽極から陰極へ移動することが分かった。こららの実験結果や解析結果から、凍上現象のメカニズムに関してきわめて重要なフローズンフリンジ(部分凍結流域)の不凍水の物性、その流動特性、ドライビングフォースなどが明らかになった。
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