研究概要 |
地震動の予測において重要な課題は,震源スペクトル・経路・局所地盤の各々の影響を定量的に解明する事である.P波の減衰の測定はこれまでほとんど無いといって良い.定量的予測に重要なS波についても,散乱減衰と熱的な内部減衰の割合が実際どのようになっているのかが地震波の振幅減衰の物理的メカニズムを知る上で重要である.又,P波・S波の震源スペクトルの推定のためには,観測点直近傍でそれぞれの増幅特性を知ることが重要であるが,これまでに硬岩での増幅特性を周波数依存性まで含めて定量的に調べられた事はなかった. (1)観測研究:栃木県足尾町銀山平において3成分短周期地震計による微小地震の高周波数帯域観測を開始し,順調にデータを蓄積しつつある.平成7年度には,S波のエンベロープの解析から散乱減衰と内部減衰の分離を行ない,減衰の物理的メカニズムの解明に取り組む計画である.(2)解析研究:これまでの5点臨時観測によって採取されたデータを解析し,花崗岩と堆積岩での高周波数増幅特性をP波とS波のそれぞれについて明らかにした(Yoshimoto et al.,1993).近地地震の観測波形について新しいコーダ規格化法を適用し,S波減衰のみならずP波の減衰の周波数依存性を明らかにした(Yoshimoto et al.,1994).(3)理論的研究:不均質構造における地震波の散乱と減衰の影響を受けた時に微小地震波形のエンベロープがどの様に形成されるかについて,エネルギー輸送理論の考えに基づく定式化を試みた.P-S変換散乱を考慮した場合(Sato,1994),及び非等方多重散乱過程を厳密に考慮した場合(Sato,1994)について定式化に成功した.
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