研究概要 |
1923年関東地震の際の東京(本郷)での強震動に関する過去の研究では、ユ-イング強震計記録と今村式強震計記録を用いて推定された地動に大きな食い違いがあった.本研究では,ユ-イング強震計の特異な記録がどのような状況のもとで観測されたものかを詳細に検討した結果,摩擦抵抗がこの地震を記録しているときに大きかったと考えることにより,従来の相異なる推定地動の矛盾を解決した.関東地震の際の東京での地震動は大きな長周期成分を含んでおり,速度応答スペクトルは周期13秒で120cm/secに達する.数値シミュレーションによる推定地動もこの結果を支持する.従来の関東地震の強震動シミュレーションの結果では周期10秒以上の長周期成分が大きな振幅を持つ様な例は得られていない. そこで,関東地震の記録から明らかになった長周期強震動のピークが規模の小さな地震の記録に見られる長周期震動のピークと異なる点に注目し,その要因の解明を関東地震のみでなくロサンゼルスで予想される大地震も想定して試みた.本研究の今年度の成果の要点は以下の通りである. 1).関東地震の際の長周期強震動のピークは,東京で観測される規模の小さな地震の長周期地震動のピークと大きく異なるものである. 2).深さ数kmから10km程度の所に位置する断層がある場合この長周期の波がみられるが,その振幅は短周期成分に比べてかなり小さい.しかし,深さ数kmから10km程度の所に位置する断層が大きなすべりをし,且つ断層の破壊伝播が観測点に向かってくるときに,この長周期の波は大振幅を持つ. 3).上記の結論は,関東地震の場合のみならず,ロサンゼルスで予想される大地震の場合でもあてはまる.
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